目次
がんリンパ手術後の登山の注意点
もともと登山好きだった方は乳がんの手術後も、また山へ登ることを考える人が多いと思います。
そして、乳がんになってから、健康やリハビリのために山を始める人も多いと思います。
特に、リンパの手術や治療を行った方は、リンパ浮腫にならないための注意が必要不可欠です。
怖いリンパ浮腫
まず、リンパとは?
リンパ管は、全身の皮膚のすぐ下に網目状に張り巡らされていて、このリンパ管の中には「リンパ液」という液体が流れています。
リンパ液は、タンパクや白血球などを運びます。
また、腋窩(えきか:わきの下)や、首の付け根、そけい(脚の付け根)などには、「リンパ節」という豆のような形をした組織があり、感染やがんが全身へ広がることを抑える役割を持っています。引用:国立がん研究センターがん情報サービス
がんは栄養のある血液、リンパに乗って行きます。
なので、がん細胞が転移、溜まったり、潜んでいる可能性があるリンパ節を、予防的に取り除いておくために、がんの手術ではリンパ節を取ることが多いのです。
もしも、増殖したがんがリンパを食い破って外へ出てしまうとがんが急速に増殖する可能性が高くなってしまいます。
私はリンパにも転移があったので、腋窩(わきの下のくぼんだ所)リンパは全摘出手術となりました。
そして、リンパに関する手術や治療を受けた方へ登場する言葉が「リンパ浮腫」です。
リンパ浮腫とは?
がん治療以外でも発症する可能性がありますが、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなどの手術や抗がん剤治療、放射線治療後に発症する副作用の一つになります。
症状については個人差があり、手術や抗がん剤治療、放射線治療の直後に現れる場合や、数年~20数年後に現れる場合もあります。
リンパ浮腫は日常生活に影響を与え、腕がむくむと、ペンで文字を書いたり、料理で包丁を使うといったことが難しくなります。
また、脚がむくむと、歩いたりすることが難しくなることもあります。引用:がん治療.com
発症すると、腕や足が倍以上の太さになり、パンパンになってしまうことも少なくありません。
そして、なぜ怖いかというと、
リンパ浮腫は、一度発症すると一生、完治することがないと言われている病気だからです。
なので、一度でも発症したら、あとのまつり…
そして、ここから最近感染などで「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という病気に発展すると大変です。
蜂窩織炎とは、皮膚の深部から皮下脂肪組織にかけて炎症を起こす化膿性の細菌感染症です。
傷口などから入り込んだ細菌の感染がその箇所にとどまらずに皮膚の深い部分にまで広がってゆき、細胞の周りに存在するコラーゲンなどの細胞間質を溶かしながら、細胞自体を壊死させます。
全体の9割は膝下で発症すると言われています。蜂窩織炎を治療せずに放置すると、細胞壊死が広がってしまい、壊死性筋膜炎や菌血症を引き起こして生命に危険をもたらすことがあります。
リンパ浮腫は、ただのむくみと侮ってはいけないのです。
発症しないための予防とはずっとうまく付き合っていくしかないのです。
なので、とにかく予防を心がけるように病院からも指示を受けます。
リンパ浮腫にならないための注意点がものすごく多い
- 体を衣服で締め付けない
- きつい下着はつけない
- 時計や指輪はなるべくしない
- 袖口をゴムで締め付けない
- 剃刀での除毛や刺激強い脱毛クリーム、脱毛器NG
- 虫刺されNG
- 素手のガーデニングや草むしりNG
- 深爪NG
- ペットに引っかかれる、噛まれるNG
- 日焼けNG
- やけどもダメなので揚げ物時要注意
- あせもに注意
- しもやけに注意
- 保湿をよくすること
- 重い荷物NG
- 片側ショルダーバッグショルダーバッグも注意
- 長時間運転しない
- 長い入浴、サウナ厳禁
- 強いマッサージNG
- 寝るときは術側は下にしない
- 術側の注射、血圧計NG
- 適度に運動をすること
- 過度に負担をかけない
- 重労働、過労、心労避ける
- 充分な休養と睡眠
- 体重増加NG
- リンパ浮腫予防のセルフマッサージをすること
と、軽く指示されるのが、この内容です。
多すぎませんか?と思いますが、これらが、リンパ浮腫の発症原因になってしまう可能性があるので要注意なのです。
私は乳がん告知を受けてから、多くの乳がんOBさんらのお話を伺える機会が増えました。
その中には、リンパ浮腫を発症してしまった方もたくさんいました。
リンパ浮腫の腫れ方は本当に怖いです。
でも、発症の理由を聞くと、術前からのついクセで手首に輪ゴムをつけてしまっていた、きつめの服の袖を上げて二の腕を締めてしまっていた、少しくらいならと思って家具の移動をした、面倒だったので素手でガーデニングをしてしまった等、術前のクセやうっかりによって発症してしまったというお話を聞き「え!そんなことで?」と正直感じました。だから怖いのです。ゆえに、上記のことが納得なのです。
登山時のリンパ浮腫予防要注意点
・日焼け
・虫刺され
・きつい登山ウェアを着ないこと
・肌を乾燥させすぎないこと
・重いザック、荷物
宿泊の場合、小屋、テント泊では、寝る場所が固めなので、万が一、寝返り等で術側が下になると危険です。
そして、就寝中の虫刺されや肌乾燥も完全に防ぐことは難しいでしょう。
なので、リンパ術後間もない登山での山泊はあまりお勧めできません。
私は、術後初めての登山はホテル泊を選びました。
もしも、術後しばらくたってから山泊にトライする方は、ザックなどを抱き枕のように利用して術側の腕を乗せた体勢で就寝するのが良いと思います。
しかし、全てを心配しすぎていると、登山は100%できなくなってしまうので、上記をできる限り意識しながら登山にトライするのがベストです。
リンパ郭清後の登山アドバイス
- 肌の露出は切り傷や虫刺されの原因にもなるので、真夏でも長袖がお勧めです。
- 目から入る紫外線も肌の日焼けに影響するので、サングラスと帽子も必要。
- スプレーなどの虫除けを完備。私はミントオイルの原液がお勧め。(※目に入れないように)
- 万が一、虫に刺された時は掻かないように。虫刺され薬を持参しましょう。
- 山やスポーツ用のアンダーウェアでもきつすぎるものはやめましょう。私は乳がん用の下着で山行しました。
- 宿泊の場合、術後間もないときは、入浴後の保湿も考えて、夜なるべくお風呂に入れる宿が良い。
- 荷物はなるべく軽い方が良い。
- こまめな水分補給と休憩をしましょう。
- 術側の腕のしびれ防止のためにも、腕を下げたままにしないように、ストックを使い歩くと良い。
- リンパ術後は腕の上がりや動きが悪いので、ウェアは前開きか大きく開閉するタイプが好ましい。
- 袖口のゴムには要注意。腕捲りで締め付けたままは危険です。アームカバーなど本当に注意してください。
- 転倒に気をつける。
- 疲れすぎないこと。
- 薬が処方されている方は、忘れずに。
特に、術側の腕に虫刺されや傷が出来るのを防ぎましょう。
傷口などから、菌が入ると、リンパ浮腫になりやすいと言われているからです。注意しましょう。
怖がりすぎずに山へトライ!
確かに、リンパ浮腫は要注意しなければいけないのですが、予防ひとつひとつの内容はどれも、難しすぎることではありません。
乳がん後も元気に登山をされている方がたくさんいます。
注意と予防さえしていれば、術後も山を楽しむことができます。
無理をせず、素敵な登山を楽しんでくださいね。
この記事へのコメントはありません。